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2024.04.16

相続登記

相続登記の義務化は令和6年4月1日から実施。義務化の内容とは?

 

おばた司法書士事務所です。

 

令和6年4月1日より、相続登記の義務化の制度が開始されました。

 

制度の内容と注意点は以下のとおりとなります。

    • 制度の概要について
  • 改正前の相続物件にも適用される
  • 相続人申告登記について
  • 相続時国家帰属制度の利用
  • 住所変更登記の義務化について

  

 1.制度の概要について

 

不動産の所有権を相続した者は、”自己のために相続の開始があったことを知り”、かつ、”不動産の所有権を取得したことを知った日”から3年以内に相続登記を申請しなければなりません。

つまり、3年以内の期限の起算日(スタート日)は、相続が開始した日ではなく、不動産の所有権を相続したことを知った日です。

 

→ということは、自分は相続人であることを知っていても、相続財産に不動産があることを知らなければ、相続登記の義務は生じないということになります。

 

被相続人(亡くなった方)が住んでいた不動産などは相続財産として把握しやすいでしょうが、遠方の土地等を持っていた場合、被相続人以外が把握していないこと多く、あくまでも、不動産の所有権を相続したことを知った日となりました。

 

罰則規定

不動産取得を知った日から3年以内に正当な理由がなく登記・名義変更手続きをしないと10万円以下の過料の対象となる

→あくまで行政上の秩序罰にあたり、罰金のような刑事罰とは異なります

 

次に、正当な理由とは以下のとおりです。

法務省の通達(令和5年9月12日法務省民二第927号)にて下記を例示しています。

  • 相続人が極めて多数に上り、戸籍謄本等の必要な資料の収集や他の相続人の把握に多くの時間を要する場合ケース
  • 遺言の有効性や遺産の範囲等が争われているため、誰が不動産を相続するのか明らかにならない場合
  • 相続登記申請義務を負う者自身に重病等の事情があるケース
  • 相続登記申請義務を負う者が配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律に規定する被害者等であり、その生命・心身に危害が及ぶおそれがある状態にあって避難を余儀なくされている場合
  • 相続登記申請義務を負う者が経済的に困窮しているために、登記の申請を行うために要する費用を負担する能力がない場合

 

上記に該当しない場合においても、法務局の登記官は相続登記申請義務者の事情を総合的に考慮したうえで、個別の事案における具体的な事情に応じて、相続登記ができない「正当な理由」として認められるかどうか判断します。

あくまで、例示列挙となりますので今後事例が増えていくにつれて新たな例も増えてくると思います。

 

 2.改正前の相続物件にも適用される

 

注意しなければならないのが、令和6年4月1日以前(改正前)の相続に対しても適用されることです。

 

民法等の一部を改正する法律 附則
第5条
6 第二号新不動産登記法第七十六条の二の規定は、第二号施行期日前に所有権の登記名義人について相続の開始があった場合についても、適用する。この場合において、同条第一項中「所有権の登記名義人」とあるのは「民法等の一部を改正する法律(令和三年法律第  号)附則第一条第二号に掲げる規定の施行の日(以下この条において「第二号施行日」という。)前に所有権の登記名義人」と、知った日」とあるのは「知った日又は第二号施行日のいずれか遅い日」と、同条第二項中「分割の日」とあるのは「分割の日又は第二号施行日のいずれか遅い日」とする。

引用元:法務省HP

 

では、いつまでに相続登記をしなければならないかというと、改正法の施行日(2024年4月1日)又は不動産の所有権を相続を知った日のいずれか遅い日から3年以内に相続登記を行う必要があります。

引用元:法務省HP|令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント

 

つまり、「知った日」と「施行日(2024年4月1日)」の遅い日(後の日)から3年以内に相続登記をすればよいとされています。今まで、不動産を相続してことは知っていたが相続登記していない方、これに該当すると思われます。

 

  • 3年以内に相続登記ができない場合、相続人申告登記の申出

 

相続財産に不動産があることは知っているが、相続人間で話し合いがまとまらず相続登記ができない場合には、相続人であることを申告すれば相続登記をする義務は免れる制度(相続人申告登記)が2024年(令和6年)4月1日より設けられます。

相続人申告登記とは

相続人申告登記とは、法務局(登記官)に対して、「該当の登記名義人に相続が発生したこと」もしくは「相続人が判明していることを申し出ることで、登記官の職権で申告をしたものの氏名・住所などを登記簿に記録できる制度です。

 

この申出がされると、申出をした相続人の氏名・住所等が登記されます。この申出をすることで、登記簿に氏名・住所を記録された相続人は相続登記の義務を履行したものとみなされます。

相続登記とは異なり、権利の取得の事実を登記するものではないので、申出をした相続人の持分までは登記されません。また、法定相続人の範囲及び法定相続割合の確定も不要です。申出にあたっては添付書面として、申出をする相続人が被相続人の相続人であることがわかる、戸籍謄本を提出します。

相続人申告登記は、申出をした相続人のみが義務履行の対象となる

相続人申告登記の申出をした相続人は、相続登記の義務を履行したものとみなされます。

法定相続人が複数いる場合において、一部の相続人のみが相続人申告登記の申し出をしても他の相続人についての義務は履行されたものとみなされません。相続人の全員が義務を履行するには、相続人全員がそれぞれ相続人申告登記の申出をしなければなりません。

複数の相続人が連名で申出書を提出すれば、複数人分の申出をまとめてすることも可能です。

相続人申告登記の申出後に遺産分割をした場合の起算日

相続人申告登記は相続登記そのものではないので、あくまで義務を免れることができる予備的な制度にすぎません。そのため、所有権が亡くなった方(被相続人)から相続人に権利が移転したということを示すものではなく、あくまで「登記簿上の所有者」が亡くなったことを示しているに過ぎないという登記手続きです。

後日、遺産分割協議が成立し、不動産を相続する相続人が決まった場合には遺産分割の日から3年以内にその名義変更登記を行う必要があります。

 

→おそらく、今後はこの制度の利用が増えると思いますが、あくまで一時的な措置であり、固定資産税等の税金の請求等がどのように扱われるかは今後の流れ次第と思われます。

 

 

  • 相続土地国庫帰属制度を利用する

 

2023年4月27日から「相続土地国庫帰属法」という新しい法律が施行されています。この法律は、相続によって得たが不要な土地を国に渡すことができる制度を定めています。

多くの人々が相続した土地を登記せず、放置することが多いため、この法律はそうした土地の効率的な利用を促進することを狙っています。

しかし、この制度を利用するためには、いくつかの条件があります。
土地を国に返すためには、土地評価に基づいて計算された10年間の管理費用を負担する必要があります。また、全ての土地がこの制度の対象となるわけではありません。例えば、建物が建てられている土地、土壌が汚染されている土地、担保権が設定されている土地、他人の通行権がある土地、権利に関する争いがある土地は、国庫に帰属させることができません。

この相続土地国庫帰属制度により、土地を国に帰属させることができるのか、要件を確認したうえで利用する必要があります。

参考:法務省HP「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し(民法・不動産登記法等一部改正法・相続土地国庫帰属法)」

 

 

 

  • 住所変更登記の義務化は2年後

 

登記上の所有権の登記名義人の住所・氏名・名称変更についても義務化されます。その登記簿上の住所や氏名、名称の情報が更新されておらず、現在の居所がわからないことも所在不明土地の原因とされているからです。

これらの状況を鑑みて、所有者の住所変更登記等は、2026年(令和8年)4月1日から義務化されます。

住所変更登記等の起算日

所有者の氏名、住所、名称について変更があったときは、その変更があった日”から2年以内に、氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記を申請しなければなりません。

2年以内の期限の起算日(スタート日)である変更があった日とは、転居、結婚、離婚、会社名(商号)の変更などをした日、厳密に言うと住民票、戸籍謄本、会社登記簿に記録されている転居日、氏名変更日、変更日が該当します。

 

住所変更登記等は2年以内にしなければ、5万円以下の過料の対象となる

住所変更登記も相続登記と同様に「正当な理由」がなく2年以内に登記申請をしないでいると5万円以下の過料の対象となります。正当な理由がある場合には過料の対象となりません。

「正当な理由」についての具体的な類型については、相続登記義務化と同じく今後の通達等で明確化される予定です。

法改正以前の物件にも適用される

住所変更登記等の義務化は相続登記義務化と同様に法改正後に発生した住所等の変更のみならず、法改正以前から住所等の変更登記をしていない不動産についても適用があります。

 

以上、2024年4月1日から開始される新制度となります。

 

なお、一部法務局では相続登記が未了の不動産の法定相続人の一人に対し「長期間相続登記等がされていないことの通知(お知らせ)」送付しているようです。

また、現在相談が多いケースとして、本来の相続人が相続放棄をした結果、市役所から固定資産税納付のお知らせが届いたがどうしたらいいか?があります。

上記の事例でいうと、お知らせが届いた段階で自己のために相続の開始があったことを知りかつ、”不動産の所有権を取得したことを知った日を知ったことになります。

この場合は、ご自身も速やかに相続放棄をするか、他の相続の方と協力して不動産を相続又は処分するかを検討するのがいいと思います。

もし、このような通知がきて相続登記のことでお困りなら、当事務所までご相談ください。